清和なる宵の獣
ウログ限定ショートストーリー 鵯 不良パロ最高ランク : 36 , 更新: 2018/06/09 4:15:13
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皆様、ご勉学中、またはお仕事中でいらっしゃいますところ誠に失礼致します。鵯と申します。
普段は占いツクールで活動させて頂いております。様々な作品を書いたり作ったりしております。是非、一度足をお運び下さればと思います。
今回は僕の没作品をちらりと見せします。是非、ごゆっくりご覧下さいませ。
紫色の不気味な空だけが私たちを照らしていた。厚い雲が月も星も隠してしまって街の灯りだけが宵の中でネオンを光らせている。その毒々しい世界の掃き溜めである所謂不良である彼は今日も禍々しい世界を嘲笑って蹂躙していた。世界の掃き溜めというのは大胆かつ、目に入る場所に溜まる。明るいところの真下なんかはその良い例だ。
「全く君という人は懲りないねぇ。別に止めろと言ってる訳ではないんだが。」
「もうちょっと優しく貼れよ…」
数名と殴り合いの喧嘩をしたのだろう。唇の端にも血が滲んでいる。そこにガーゼを貼り付けて指で弾いてやれば痛そうに眉を顰める。目元の下辺りには絆創膏を貼ってやる。じっと我慢していたということを褒めるために髪をくしゃくしゃに撫でてやれば嬉しそうな顔をした。
「で?今回は何が原因?」
「君のこと、悪く言ってたからつい。」
不良の癖に視力の悪い目に眼鏡をかけ直してやる。紫色のフレームは彼によく似合っていた。ついでにハウスダストがからっきし駄目だから新しいマスクを彼の口に被せてやる。髪色と耳にいやという程ついたピアスを無視すれば真面目な生徒だ。
「それは劣等生だね。というより完全不審者じゃん、俺。」
「元からではなかったか?というより早く帰らなければ補導対象になるぞ。」
彼はスクールバックを背負い直す。無駄にじゃらじゃらと装飾がついているお陰で彼のバッグだと一目で分かる。彼は突っ伏して気絶している不良たちの財布を抜き取るようなことはせず、絆創膏を一枚ずつ入れてあげていた。
「律儀だな。」
「負犬の杭を打ち込んでやってるんだよ。」
彼はそう吐き捨てると辺りを確認した。私物などが落ちていると彼が加担していたということの証明になる。面倒なことこの上ないのでその辺りには細心の注意をはらっている。
「さぁ、帰るぞ。」
「うん。」
こつりとコンクリートを削る足音。妙な拘りと光沢のある彼の革靴が立てる音だ。それは不気味に空間に鳴り渡って宵の雲に吸い込まれてゆく。彼の背中越しに見た夜空には朧月が浮かんでいて何処か切なくなる。私は知っている。彼が本当に望んでいるものは私ではないと。彼の手の温もりがまだ生きていると、彼が人間だと知らせてくれる。
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