忘れてよ_____

虚妄
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夏が終わりかけてる日だった。
世界で一番可愛かった彼女に振られたのは。

「好きな人が出来た」「今までありがとう、幸せになってね」暗くなった世界にそう呟いた君にただ呆然とするしかなかった。
なんでもしてやったはずだった。
色んなところに出かけて、美味しいものものも沢山食べて、幸せだった。

昔の思い出を懐古してしまうのは、その彼女から手紙が届いたから。だろうか。
「挙式を上げます」そう書かれた手紙が届いたからだろうか。

“元カレ”という立場の人間が出る幕では無いはずなのに、元カレである自分に届いた手紙の返答を迷っていると、机に僅かな振動が何度か伝わる。
画面には、大好きだった人の名前とアイコン。
「もしもし」そう言えば、同じ返答が返ってくる。
『手紙届いた?』柔らかい声が耳を駆ける。
「ああ」
『結婚式…来てよね。ウェディングドレス、着るから。』
「ああ、行くよ。」
『それだけ。じゃあね』
「またな」

いくらなんでもそりゃないだろと叫びたい衝動が体内を駆け回る。
ウェディングドレスを元カレに見せたい彼女は、いつまで経ってもかわいい。俺は彼女を死ぬまできっと忘れられない存在なのだろう。


挙式当日。
俺は挙式会場にはいなかった。
最後に一つ嘘をついてしまった元カレの存在を忘れて欲しい。

海外に飛び立ってしまった。
仕事が順風満帆に行きすぎて、海外でビジネスを開くことになったから、挙式会場には行けなかったのだ。

空港で、あの人の後ろ姿が見えた。
これから結婚式なのだろう。
幸せそうだった。
あの時よりも。あの日よりも。

此方の存在を知られるよりも先に、飛行機に乗ってしまおうとしたが、上手くは行かなかった。
搭乗口の所で立っていた。彼女が。
『私の存在なんて忘れてよ』「お前もな」『またね』「じゃあな」
手紙も寄越したのも、電話を寄越したのも全部お前だけどなとは言わなかった。
『忘れてよ』その一言が1番忘れられないことも彼女は分かっていないことも言わなかった。

それも全部。空港に置いてきた。
彼女へ言いたいことも、彼女へ想いも、彼女の存在も。
全部置いてきた。

数年後。彼女のアイコンは、幸せそうな家族写真に変わっていた。
「本当に忘れてんなよ」と少し笑みが溢れる。


俺の頭上を飛行機が飛んで行った。



俺は彼女を死ぬまできっと忘れられないのだろう。


______𝘍𝘪𝘯








はじめまして。
何処にも出せないような小話を細々と出していきたいと思っております。

今や殆どの𝐙世代の方が推しがいるという時代です。
そんな方々が自由に色々な人当てはめてご想像して頂けるようなお話を書く事が目標です。

拙い文章ですが何卒ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします。

なお、大方ルール等は把握しているつもりです。
𝐅𝐑𝐁𝐂いいねリプ等はご自由にして頂いて構いません。

遠い国の君。


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