EP1-09 魔術師の少年

創作 第一章 大魔女試練編
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最高ランク : 8 , 更新: 2023/08/02 1:12:06

✸前回までのあらすじ✸

魔法を操る「魔術師」、「魔女」らが存在する魔界。そんな世界で、魔女の憧れの存在、「大魔女」になることを、「月の魔女」ダイアナは親友で「魔の魔女」シャロと共に志していた。そして、二人は魔界に忍び寄る「異変」の存在に感づいてもいたのだった。
ある日、半年に一度行われる「大魔女試練」と呼ばれる大魔女になるための試験が実施され、二人は最終試験を受ける段階にまで進む。だが、シャロは謎の二人組により誘拐されてしまう…彼女が誘拐されているとは知らないダイアナは、シャロの行方が分からないまま、一人で最終試練へと立ち向かう。
最終試練の出題者、大魔女ライノーに引き続き大魔女ソリエルの試練に挑むことになったダイアナは、「人間界で、人間に魔術指導を二年間すること」というとんでもない試練内容に驚愕するも、大魔女になるためには、と心を決め、家族に二年間の別れを告げる。












「ねぇソル、今日も具合が悪いの?」

「……ぅ……」

翌日。荷造りを終えた私は、まだ具合が悪そうなソルの所へ様子を見に来たのだけど…
まだ、眠っているみたいね。
昨日お父様にソルの調子が最近良くないって事を聞いて、言われてみれば確かにそうだと思ったの。
私もここ数年は鍛錬で忙しくしてて、ロラだけじゃなくソルのこともあまり気にかけてあげられなかったんだけど…大魔女になった後は、ソルと居られる時間を沢山作れるはず。

「さん……駄……よ……」

「え?」

ソルの口から微かに声が聞こえたけれど、ソルは目を閉じてる…寝言かしら。
気のせいかと思っていると、

「姉さん……行っちゃ駄目…だよ……」

…今度ははっきりと聞こえたわ。うっすらと、涙まで浮かべてる。
眠っているはずなのに、私を引き止めてるなんておかしな子ね。

「ソルも、お母様達と一緒で心配性なのかしら?」

ふふ、と笑って頭を撫でてあげると、ソルはまだ目を閉じたまま、少し険しい顔で呟いた。

「行かないで……姉さん………」

「ワガママ言っちゃダメよ、ソル。…私、大魔女になるためなら、どんな試験だって乗り越えるってもう決めたのよ。」

もう一度頭を撫でてから、枕元にソルに書いておいた手紙を一通置いた後、私はソルの部屋を出た。




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「シャロ、いるー?」

時刻は、大体午後になって1時間が経った頃。
家を出た後、シャロの屋敷に着いた私は、二階にあるシャロの部屋の窓をノックしてみたけれど…反応なし。カーテンも閉まってるわ。

「どうしたのかしら…?」

「おお、ダイアナ!娘に会いに来たのか?」

すると、下の玄関の方からシャロのお母様、魔の大魔女ヴェイノリ様が私に気付いたみたいだった。
彼女は流石はシャロの親というべきか、シャロ以上のイケメン(女性)ね…と、そんなことを考えている場合じゃなかった。

「こんにちは、ヴェイノリ様!はい、シャロに会いに来たのですが、今ここにいますか?」

「今、娘は体調不良でね…部屋で休んでいるんだ。何か伝言があれば、伝えておくよ。」

「そうだったんですか…昨日、試練に来なかったので、心配していたんです。」

そっか、シャロ…残念だったわね…体調不良等の欠席では不合格扱いにならないらしいから、大魔女に一生なれない、なんてことは無いでしょうけれど…また次の試験、半年後まで待たないといけないんだもの。

「本当はシャロに直接会いたかったのですが…無理させるのもいけませんし、伝言をお願いします。」

私は二年間魔界を離れること、人間界に行ってからも手紙を送ること、次に会ったらまた沢山話しましょう、など本当は本人に伝えたかったことを簡潔にまとめて伝えた。

(ソルもそうだけれど、シャロも体調が悪いなんて。大丈夫かしら…まさか、異変が原因だったりしないわよね…)

「そうか、二年間も…向こうでも気を付けるんだよ。…手紙は送れるかどうか分からないけれどね。」

「ありがとうございます、頑張ってきますね…!シャロの体調、早く良くなることを願います。」

彼女の言葉から、シャロが手紙を書けないくらいには体調が悪いってことが分かる…心配だけれど、伝言は伝えたし、もうこれ以上長居はできない。
ヴェイノリ様に別れを告げて、私は再び空を飛んだ。





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私はシャロの家から、そのまま堕の地区の集会所に向かった。これでやるべきことは最後のはずよ。

「皆、急な連絡だったのにわざわざ集まってくれて、どうもありがとう!」

「何も…問題、ありません…!」

「話したいことがあるのなら早々と済ませろ。……急かしている訳では無い。」

ルミカちゃんとグレシアさんの返答を聞いて、私はにっこりと笑った。
さて、緊急5長会議を開かせてもらった私は、私以外の他四名の魔女達に集まってもらって、二年間会議に出られないこと、その旨を説明させてもらうことにしたわ。
17長会議の方が良かったかもしれないけれど、大人数になると欠席者が多くなる可能性があるし…何より、シャロが来られないしね。

「わ…今日は、時間通りに全員、いる…珍しいです…」

「そうね!ヴィーノちゃんも、5分前に集まってるなんて珍しいわね!」

「緊急だって言われたからさぁ、ちょっと張り切って、いつもはぐーん!って飛んで行くのを、今日はバビューン!!にした〜☆逆にぃ〜、今日はおベス先パイの方が遅かったんじゃなーいでーすかー?」

ルミカちゃんが目をぱちくりしながら周りを見渡すと、私の後ろで低空中飛行をしながらクルクルと回転していた魔女が、ニヤッと笑ってベスタちゃんの方を振り返った。

彼女はランキング4位、異の魔女で、私の2年後輩のヴィーノちゃん。独特の感性と魔術の使い方、そして持つ魔力を最大限に活かすことが得意で、異の魔女の中ではトップの力を持っている子なの。
でも、いつもの会議ではギリギリに来るか欠席するか…17長の方の会議では来てくれるのは10回に1回ほど。そんな彼女が、真面目なベスタちゃんより早くに来たのは確かに珍しいかもしれないわ。

「そ、それは申し訳ないけれど…お母様の鍛錬を受けていたら、遅くなってしまったんですよ…」

「それは仕方ないわ。急に呼び出してしまった私も悪いし、ベスタちゃんは遅刻はしていないし何も問題無いわよ。」

「ありがとうございます…では早速、本題を言っていただいてよろしいですか?」

ベスタちゃんの言葉を皮切りに、私は簡潔に話し始めた。
そして、会議が始まってから一時間後には、この集会場の外でソリエル様がいらっしゃるようお願いをしておいたから、会議が終了したらソリエル様の説明を再度聞いて、私が魔界でやるべきことはおしまい。
__今日から、私はソリエル様の試練を開始する。



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…思っていた以上に四人の物分かりが良くて、会議は40分ほどで終わってしまったわ。
もう少し皆動揺するものかと思っていたら、

「なるほど…2年、結構、長いですけど…向こうでも、頑張って、くださいね!」

「楽勝だろう。とっとと終わらせて2年後に戻ってこい。こちらの事は気にするな。」

「おおーー、なんか楽しそ!ダイダイ先パイがんば☆」

「大魔女試練って、そんな凄い試験内容なんですね…頑張って下さい。先輩がいない間、頑張って仕事をこなしておきます。」

と、皆応援してくれて…いい仲間を持ったわ、本当に。

(ソリエル様がいらっしゃるまで、まだもう少し時間がありそうね。最後に、荷物の確認だけでもして…)

魔術で質量を縮小していた荷物を元のサイズに戻して、荷物確認をしながら彼女を待つことに。
いや、人間界に一人で、魔術を使って行く事はできるんだけれどね?ソリエル様が指定した場所っていうのがまだ知らされていないの。
異界する直前に教える、って言って、初めて試練の内容を聞いたあの時は別れてしまったから。

(それにしても…私がいく人間界の地域って、どんなところかしら。魔界とは気候や文化が違うってことは聞いてるし、人間の生態についても習ったんだけど…試練先の場所とかはよく聞かされていないのよね。ソリエル様の事だし、酷い場所ではないと思うんだけど、一番気になるのは…指導する子のこと。ソリエル様の親友さんのお子様ってことは…いくつくらいなんだろう…)

「ええと、ソリエル様はたしか今年で39歳だったから…魔女の方が同い年であると仮定して…ルミカちゃんくらいだとすると、大体、十代後半くらい…?いやでも、人間が子供をつくる平均年齢までは分からないし…うーん…」

その人間の子は、一体どんな人なんだろう?













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同時刻、人間界の日本という地。

「…わあっ!」

人通りの少ない山道を走り抜ける一台の車の中で、一人の少年が歓声をあげた。

「母さん!新しい家、こんなすっごいところにあるの!?」

「そうよー、……ってちょっと侑!危ないから車の中で立ち上がらない!!」

立ち上がるだけでなく、ぴょんぴょんと車の中で飛び跳ね始めた息子を見て、慌てて母親は制止した。

「だって〜!こんな景色初めて見たよ!こんな綺麗な森!」

「あはは…後で好きなだけ見られるんだからホラ、もう着くよ!荷物全部用意して!」

「やった!それにしても引越し業者さん大変そうだなぁ、こんなせっまい道通れるのかな?」

この侑という少年は、母親と共に森林近くの新居へ一時的に引っ越してきた。
はしゃぐ侑を横目に、母親はゆるく微笑んでいる。

「通れるの、じゃなくて通らせるんでしょ?侑。魔術使っちゃえばいいのよ。」

「おお!!そっか!」

そう、お察しの通り、この侑がダイアナの教え子となる「人間の魔女の子」である。
しかも、魔法使いの自覚をちゃんと持っており、手軽に魔法を使えるくらい日常的に魔法を使っているタイプの少年で、母親も別にどうとも思っていない感じである。
そして、なんと侑はまだ小学一年生、七歳の少年であった。
可哀想なことに、ダイアナの考察結果は全て吹っ飛んでしまったようである。

「でも、道を作り変えるのはあとにしよう。まずは荷物を運び出さないとね。ほら、着いた!」

「えっ、ひろっ!!」

急に森がひらけて、広い大地が姿を現した。
数ヶ月前に侑の母、裕香がこの場所に別宅を建てようと決めたのである。

「すごいな!母さん、どうやってこんな広い土地買えたの?」

「買ってないわよ。借りたの。」

「え?」

「この辺りの森ね、あるお金持ちの方がまるまる全部買い取った土地なんだって。私達が住むのはその一部で、お金を払って借りることになったの。ここにいるのもずっとじゃないし、その後はもう住まないつもりだしね。まぁ、落ち着いたら挨拶に行かないとだねー。」

「なるほど…でもこの森全部買い取るってどんな金持ちなの…でもその人たちさ、よく見ず知らずの俺達に土地を貸してくれたよね?」

「ふふふ。実はそこが重要なところだったんだけどね?」

母親は少年に向かって、にっこり笑った。

「なんと!そのお金持ちの方の一族も、異能力使いなんだって。」



次回 第十話「旅立ちと邂逅」 (第一幕「大魔女試練編」最終回)















---------------------------------------Botsu scene②-------------------------------------

「着替えを7セット…魔具は必須…初心者向けの魔術教本に……あとは、魔女服は予備を3セット…」
「おねえさま!これも持って行ってほしいです!ロラからのプレゼントです!」
「ロラ、ありがとう!もしかして手作り?凄いわね!」
「ダイアナ、これも持っていきなさい。」
「ありがとうお母様。…これは、新しい魔女服?でも、もう着替えは入れてあるし…」
「ダイアナ、これとこれも持っていくんだ。」
「あ、ありがとうお父様…あの…ちょっと多いかもしれな…」
「あとダイアナ、ソルの伝言で、これも持って行ってって渡されたわ。」
「お…多すぎるわよっ…!!」
アウロラの手作りのお守り(可愛い)、母の特製魔女服(GPS付き)、父の特製魔具(希少な魔石付き)、そしてソールの大量の魔法便箋(100枚以上)を一気に手渡されたダイアナは、思わず大声をあげてしまった。
昨夜から始めていたのにも関わらず荷造りに難航し、家を出るのが午後になってしまったのはこれが一因である。

ハノウ


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新キャラを雑に出してしまった内容だった気がする。
申し訳ない…


ハノウ
2023/08/03 6:59:49 違反報告 リンク


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