ULOGハロウィン!

兎目覚める夜 小説 #ULOGハロウィン
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最高ランク : 2 , 更新: 2023/10/30 19:06:30

勇気の翼よ、夕空を切り裂け__

どうも、皆さんこんばんは。

橙翼深兎です。

皆さん、今日は何の日か分かりますか?

はい、言うまでもなくハロウィンですね!

というわけで、俺は匿名希望様の主催する「ULOGハロウィン」に小説部門で参加させていただくことになっています。

では、早速書いていきましょう!



「REALIZE」


――ハロウィン。

それは、人間たちが人ならざる者の仮装をして街を練り歩く、1年に1度の行事。

そして、人ならざる者にとっては――。



「かーわーいー!」

10月31日の朝。

私の家にやってきた新川琴佳(しんかわ ことか)が私を見るなり叫んだ。

「空乃(そらの)、マジで可愛い! こんな可愛い魔女にだったらいくらでも呪いかけられたいわ!」

「ちょ、ちょっと、それは大袈裟だよ……」

そう、今日はハロウィン。

だから、私たちは仮装をしてみんなに会うことになっていたのだ。

「琴佳だって可愛いよ、かぼちゃの衣装」

私が言うと、琴佳はモデルのように一周回ってポーズをとった。

「そうでしょ〜! ヘヘッ」

私はすっかり調子に乗った琴佳の腕を軽く引っ張る。

「そろそろ行こう。みんな待ってるよ」

「あ、そうだね。ごめんごめん」

そして、私たちは一緒に家を出た。


待ち合わせ場所の駅に着くと、クラスメートたちは半分ほどが集まっていた。

「あ、日向(ひゅうが)さん、新川さん! おはよう!」

学級委員長の里見(さとみ)さんが私たちに手を振る。

事の発端は一週間ほど前。

里見さんがハロウィンにクラスのみんなで仮装をしようと言い出したのだ。

クラスの親睦を深めるのにもいいから、と。

特に都合が悪い人もいなかったため全員参加することになり、今に至る。

「委員長は赤ずきん? 可愛いっ!」

琴佳がハイテンションで言う。

里見さんはニコニコしていた。

その後も仮装したクラスメートたちが次々とやってくる。

そろそろ全員集まったかな、と思ったとき、誰かが叫んだ。

「みんな! 月影くんが来ない!」

女子たちが一斉に声の聞こえた方を見る。

月影歩都(つきかげ あると)。

女子に人気のクール男子だ。

私は興味ないが、イケメンで成績優秀、おまけに運動神経抜群らしい。

でも、どこがいいんだろう、と思うところがある。

例えば、いつもフードを被っていて暗い雰囲気だし、誰とも話そうとしないし、友達がいる様子もない。

私はもっと、一緒にいて楽しい人がいい。

「え!? おかしいなあ、来るって言ってたのに……」

女子たちの雰囲気が一気にどんよりしていく。

「月影くんの仮装、見たかったな……」

琴佳もしょんぼりと肩を落としている。

そういえば、琴佳も月影くんが好きなんだっけ。

どんどん盛り下がっていく空気を、声優のような綺麗な声が切り裂いた。

「俺、ずっといるんだけど」

それは、紛れもなく月影くんの声。

しかし、周りを見ても月影くんらしき人物は見つからない。

「え、どこ?」

「誰か声真似してる?」

「俺の声真似なんかしたい奴いるか。ほら、ここにいるだろ」

声の方向を探り当てると、私は驚愕した。

きっと私に限らず、誰もが驚愕しただろう。

だって月影くんは、仮装の再現度が高すぎて誰だか全然分からないほどだったから。

相変わらずのフードの中に見えるのはいつもの黒髪ではなく、つややかな銀色の長髪。

瞳は真っ赤。

カラコンまで入れてきたらしい。

口には付け牙。

そう、いささか気合い入りすぎな気がする彼の格好は――、

「吸血鬼!」

私は思わず叫んだ。

何を隠そう、私は吸血鬼が大好き。

仮装とはいえ、やっぱり吸血鬼はかっこいい!

「ちょっと落ち着こう、吸血鬼オタク」

琴佳が苦笑いするがお構いなし。

「すっごい、本物みたい! かっこいいよ月影くん!」

「えっ、日向さん……?」

月影くんが救いを求めるような目で琴佳を見る。

「お前の連れは大丈夫なのか」とでも言いたげな目だ。

確かに、自分でも今の私はちょっと気持ち悪いと思う。

だけど、興奮を抑えることはできなかった。

「すごい、牙とか本物っぽい! うわあ、血吸われてみたいな〜!」

「は!? な、何言ってんだ!?」

「空乃、ちょっと落ち着こうか」

琴佳が動揺する月影くんから私を離す。

「ごめんねー月影くん。空乃、吸血鬼オタクだから。……それにしても、すごいねその衣装。本物みたいじゃん。月影くんってそんなに仮装ガッツリやるタイプだったんだね。意外〜」

「……まあ、ハロウィンだからな」

「とりあえず、もう行く?」

「そうだね!」

月影くんがいたことに安心し、みんなに話を進める。

私たちは、みんなで近くの公園に移動した。


公園では、みんなお菓子を交換したり、はしゃいだりしていた。

でも、私はと言うと――

「吸血鬼……いいなあ……」

吸血鬼に扮した月影くんを眺めていた。

日陰のベンチで本を読んでいる月影くん。

仮装だと分かっていても、なんとなく本物みたいに見えてしまう。

「空乃、まだ見てるの? そろそろキモいよ?」

「ごめん、でも、なんか本物っぽく見えてきちゃうんだもん……」

「確かにクオリティは高いけどさ……吸血鬼なんているわけないじゃん?」

琴佳が呆れたように言う。

――だよね。

吸血鬼なんていない。

月影くんを本物の吸血鬼に見立てるとか、よくないか。

「日向さんと新川さーん! お菓子交換しよー!」

里見さんが私たちを呼ぶ。

「うん!」

私は月影くんから目を離し、みんなのところに行った。



日の当たらないベンチで本を読みながら、俺はクラスメートたちを眺めていた。

やっぱりちょっとやりすぎただろうか。

もうちょっと抑えた方がよかったかなと若干後悔しながら、自分の銀髪に目を落とす。

もうちょっと人間らしさを残しておくべきだっただろうか。

日向さんにガン見されるということは、やっぱり俺は不自然なのだろう。

――でも、しょうがないよな。

俺たちにとって、ハロウィンとはそういうイベントなのだから。

普通じゃない、ありのままの俺たちの姿でいられる日。

「月影くーん! こっち来なよ、お菓子交換しよー!」

委員長が俺に呼びかける。

俺は本に栞を挟み、フードを目深に被って立ち上がった。

「月影くん、チョコ好き?」

「普通」

「じゃあこれ、あげる!」

「……ありがとう」

……普段チョコなんてあまり食べないけどな。

本当はもっと甘い――いや、やめておこう。

手元のチョコをなんとなく眺めながら、背中にはなめるような視線を感じていた。



「空乃、いい加減キモいって」

琴佳が私を諫める。

でも、私には理由があるのだ。

「なんか……あれって本当にコスプレなのかな?」

「え? あんた何言ってんの?」

「だって、すごく自然なんだもん。違和感なさすぎるの。もしかして本物……」

「それはないから」

「ないか……」

確かに私の妄想なのかもしれない。

だけど、やっぱり拭いきれない違和感。

あんなに本格的なコスプレなのに違和感がない、という違和感だ。

「うーん……」

「何見てるんだ?」

「ぎゃっ!?」

さっきまで後ろから見てたはずの月影くんがいつの間にか目の前にいた。

まさか、瞬間移動!?

いや、それはないか。

「なんでジロジロ見てるんだ」

月影くんの鋭い目つきに怯んでしまう。

「え、えーっと、つ、月影くんのコスプレすごいなーって! 違和感とか全然なくてさ、本物みたいだよね!」

「……」

咄嗟の言い訳に月影くんの表情は変わらない。

あれ、私、なんか変なこと言った?

「……日向さん」

「はひっ!?」

「……もし、本当の吸血鬼がいたら、どうする?」

私はふざけたような質問内容に戸惑う。

しかし、月影くんの顔は至って真剣だ。

「本当の吸血鬼? うーん、とりあえず崇めて、血を吸ってもらっちゃおうかな〜。あ、私も吸血鬼にしてもらうのもいいかも!」

「ふうん……」

月影くんは少し考える仕草をし、それから不敵に笑った。

「じゃあ、トリック・オア・トリート」

「え?」

すると、周りの景色が急に変わった。

私たちの街ではない、暗くジメジメした場所。

「……っ!?」

首筋に痛みが走る。

体中の神経が一点に吸い寄せられるような感覚。

――もしかして、私、月影くんに血を吸われてる!?

ささやかな高揚感も束の間、私は意識を手放した。



「ふう……ごちそうさま」

久しぶりのごちそうだ。

俺は口元についた甘い血をなめる。

初めて見たときから、日向さんの血は飲んでみたいと思っていた。

こんなの滅多にないような甘い匂いが漂っていたからだ。

そして、人の血は興奮するとさらに甘くなる。

だから、血をもらうなら今しかないと思った。

――さて、そろそろ戻ろうか。

俺は気絶した日向さんを抱えてさっきの公園に戻った。



「んん……」

私は少し重い体を起こす。

私はなぜか公園のベンチに寝ていた。

眠る前の記憶があやふやだ。

確か、月影くんに血を吸われて……いや、これは夢かな?

私は公園の中心部の見る。

クラスのみんなが楽しくはしゃいでいた。

その中の、月影くんと目が合う。

月影くんは静かに口元に人差し指を当てた。

――夢じゃ、なかったのかな。

そう思うと、なんだか胸が熱くなるのを感じた。




どうですか?

俺の大好きな吸血鬼の話ですね。

めっちゃ長くなってしまいました。

飽きずに読めた方は褒めます((

それでは、ハッピーハロウィン!

__ひろがる夢よ、朝日を呼び覚ませ

翠風深兎@リリィとペア画


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吸血鬼良いよね!!
表現ウマ。こっちもキュンと来た


꒰ა✞継澪✞໒꒱
2023/10/30 18:39:48 違反報告 リンク


だよな、吸血鬼いいよな!
キュンと来ただと?
そんなこと言ってもらえると嬉しい!


翠風深兎@リリィとペア画
2023/10/30 18:41:46 違反報告 リンク


天才ですか???

akarosiku
2023/10/30 18:47:50 違反報告 リンク


天才じゃないw

翠風深兎@リリィとペア画
2023/10/30 19:00:20 違反報告 リンク


待って最高すぎん?
吸血鬼ってウチの中で小説にしにくいと思う…
いや〜さすがっすこれが(以下略)
ちな、格の差っていうのは、まあ、
あなたは神でウチは平民以下で、「神と平民」
…いや待ってウチ平民より身分…いやとにかくこういうことだ☆


星絆炎樹@低浮上
2023/10/30 19:37:17 違反報告 リンク


おいおいw
俺は神じゃないだろw


翠風深兎@リリィとペア画
2023/10/30 19:38:04 違反報告 リンク


あ、神だ…
二次創作しか書いてない端くれには出来ないもの作ってる…


ひすい
2023/10/30 19:57:44 違反報告 リンク


神じゃないってw
俺は逆に二次創作が書けないから()


翠風深兎@リリィとペア画
2023/10/30 20:13:43 違反報告 リンク


ウチも吸血鬼好きなんですよ〜!天才です!!

蒼雨時万🌌🎼「夜型人間」
2023/10/30 20:30:49 違反報告 リンク


吸血鬼好き仲間だな! 知ってたけど!((
だから天才じゃないってw


翠風深兎@リリィとペア画
2023/10/30 21:21:46 違反報告 リンク


最高ですね😇
後、アイコンが一瞬他の人に見えたのは内緒…


めんたいこ@サブ化してます
2023/10/31 3:52:38 違反報告 リンク


ああ、アイコンか
吸血鬼の仮装してる俺だ()


翠風深兎@リリィとペア画
2023/10/31 5:00:51 違反報告 リンク


わ〜❗️やっぱりみとさんはすごいね❗️
作詞も小説もできる…本当に天才だと思う❗️


blueboysky
2023/10/31 5:30:22 違反報告 リンク


小説!すっご〜い!文才あるっていいな〜!
吸血鬼…かっこいいよね!


LkjhgfdS
2023/10/31 5:53:47 違反報告 リンク


日向さん可愛いなぁ。
そして展開が良すぎてニヤけた。
あと、話の入りも良き👍👍


白河青蓮
2023/10/31 7:51:21 違反報告 リンク


蒼空→天才じゃないってw

ゆいゆ→吸血鬼いいよな!

青蓮→ニヤけたのかw


翠風深兎@リリィとペア画
2023/10/31 8:35:01 違反報告 リンク


アッ神様
ヤバイヤバイ吸血鬼かっこいい~!!
私吸血鬼好きだからね、無事死んだよ()


リリィ・スノー@ペア画
2023/11/01 4:54:45 違反報告 リンク


お、吸血鬼好き仲間発見!!

翠風深兎@リリィとペア画
2023/11/01 18:10:41 違反報告 リンク


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